異業種連携による“雪室ブランド”の立ち上げと挑戦【越後雪室屋|新規事業開発】
雪を使った食品保存庫「雪室」で熟成した食品を取り扱うブランド『越後雪室屋』。
新潟の食のプロたちが力を合わせ、“雪国新潟の美味しさを全国に広めたい”という想いから誕生した、新潟発のブランドです。
弊社では、ブランドの立ち上げ・デザイン・広報・事務局など、プロジェクト全体の運営に携わってきました。
今回の記事では、新潟から全国各地、そして世界へと発展を続ける越後雪室屋を例に、ブランドの歩みや新規事業開発のポイントなどをお伝えします。
1.ブランド設立の経緯
背景
雪国新潟では、昔から雪室を利用したお米やお酒などが数多く販売されていました。しかし、各社がそれぞれ独自に雪室商品を開発していたため、雪室の知名度はそれほど高くない状況でした。そこで「このバラエティ豊かな雪室商品の数々を一つのブランドとして統括することで、より広く雪国新潟の魅力を発信できる!」「雪室で熟成させた商品を総合した新潟県随⼀のブランドを作ろう!」と考え、その想いに賛同した各社と力を合わせてブランド化に向けた計画がスタートしました。
設立から現在までの歩み
まずは弊社を含む新潟市内の4社が主要メンバーとなり、越後雪室屋の「準備委員会」を設立。その後、上越市安塚区の雪だるま財団と連携して参加企業を増やしていきました。2010年9月には、理事会を初開催。そこから2,3ヶ月かけてブランド運営の目的を話し合い、共通の指針を生み出していきました。
その後、重要な議題となったのは、ネーミング。「古来からの新潟の呼び名「越後」を冠として、シンプルに呼びやすい名称にしよう」という想いのもと理事会で検討を重ね、2011年に『越後雪室屋』の名称に決定しました。また、参加企業各社の投票により、現在のロゴマークも決定しました。
ロゴマークの決定に伴い、パッケージやリーフレット、ビジュアルイメージに関わるデザイン全般、マーケティング、商品開発も進行。展示会やイベントにも出展し、メディアに取り上げられるなど、広報・営業につながる活動にも取り組み、活動の原型が出来上がっていきました。
2012年には『にいがた雪室ブランド事業協同組合』として事務局を設立。味と品質にこだわる数々の食品メーカーや、ブランディング、流通業者、中小企業診断士や協力団体が集まって事業協同組合となり、本格的な活動がスタートしました。
現在は、毎月1回「雪室理事会」を実施。商品の認可、今後の指針に関わる全てのことを話し合う場として活用されています。
設立までの主な活動
- 団体構築・運営
- 理念・ビジョンの作成(CI)
- ロゴ・ブランドデザイン(VI)の作成
- 商品開発・デザイン
- マーケティング・広報実行
- セールス方法作成・実行
- 異業種連携の推進・実行
2.ブランディングのポイント
❶ 越後雪室屋の価値を高めるために
業種の異なる会社同士が連携して組合を形成する、越後雪室屋。広報・営業戦略・イベントの開催・アイデア共有・その他の展開を行う際には、毎月の『雪室理事会』で議題を上げて検討しています。この理事会において、弊社代表の関本は「にいがた雪室ブランド事業協同組合事務局長・ブランディングディレクター」として、ブランドの方向性を定めるハンドリングの役割を担いました。
さらに、理事会は新商品の審査の場としても活用されています。新たな商品が越後雪室屋の商品にふさわしい美味しさなのかどうかを全員が厳しい目線で審査し、情熱を持って商品開発に励んでいます。
この会における一つひとつの選択が、越後雪室屋ブランドのクオリティーを高め、発展させていく。そのような信念を組合の全メンバーで共有している点は、他ブランドにはない強みとなっています。
❷新潟らしさを活かしたロゴマーク
ブランドの印象に大きく影響する、ロゴマーク。「雪室に入れて熟成させることで、他とは違う付加価値が生まれる」という、越後雪室屋ならではの特徴を活かしたデザインを計画しました。
昔ながらの伝統貯蔵技術と言われる雪室のクラシカルな要素を和風な筆文字で表し、雪の結晶のマークで組合のつながりや団結力、個性、優しさなどを連想するロゴマークとなりました。
また、海外での展開を意識して英字表記も取り入れ、さまざまなシーンで使いやすいものになりました。
❸越後雪室屋ブランドを象徴するパッケージ
✔︎ 越後雪室屋のロゴマークを全商品共通で入れる✔︎ ブランドコンセプトカラーであるネイビーと白を基調に構成する
これらのきまりに基づいて制作するパッケージは、いずれも“高級感”のあるデザインを意識。商品自体の上質感や、百貨店の棚に並ぶ商品の特別感を体現するものを目指しています。
パッケージは、商品の売れ行きに関わるとても重要な要素です。新商品が開発される段階で、生産者の方や商品販売に関わる方への綿密なヒアリングを行い、商品の強みや打ち出したいポイントを明確にした上で、デザイン制作を進行していきます。
越後雪室屋の商品として味や品質が確かであることに加えて、パッケージの高級感からギフトとしても喜ばれる商品として展開されています。
❹新潟から全国各地、そして海外へ
広報・営業戦略の効果が顕著に現れたのは、2012年に行われた展示会「FOODEX JAPAN」でした。東日本大震災の直後に開催された食の展示会ということもあり、新潟らしい「雪と食」という組み合わせ、そして自然の力を使った貯蔵方法が注目を集めたのです。メディアの取材依頼も殺到し、地元はもちろん、他県からの問い合わせも飛躍的に増加しました。
そして現在、越後雪室屋の活動は新潟から関東首都圏そして世界へと広がっています。
まずは、各地方の大きな展示会やイベントへの出展。展示会では、主に次シーズンに向けた新商品のPRや、通年商品の展示をする場として活用しています。
展示会等での地道なPR活動を経て、商品が安定して売れるようになったことで、メディア取材も増加。各社大手のメディアや、地元のテレビ、雑誌などに取り上げられ、全国各地から注目が集まる機会が増えました。
その後、新潟のみならず、東京都内をはじめ香港やシンガポールなどのホテルやレストランでも雪室商品の取り扱いがスタート。「雪室熟成肉」が注目を集めてブームをもたらすなど、商品やブランドの価値が広まるきっかけとなりました。
また、2024年3月には雪室屋の商品をメインに取り扱う店舗【越後雪室屋 STATION Labo】が新潟駅にオープン。雪国新潟ならではの食の魅力を県内外のお客さまに知っていただける場所ができました。
3.まとめ
越後雪室屋の活動開始から10年以上。売上を順調に伸ばし、販路は新潟県内から全国へと広がりを見せています。
さらに、熟成肉ブームにより「雪室熟成肉」がシンガポール・香港・NYなどの一流ホテル・レストランで採用され、越後雪室屋の価値が世界でも広まっています。
また、「中小企業庁 がんばる中小企業300社」や「イノベーションネットアワード 農林水産大臣賞」「にいがた産業創造機構〈IDSデザインコンペティション2012〉審査員特別賞」など、数多くのアワードで選出・入選しています。
今後の展開としては、継続的な新商品の開発はもちろん、越後雪室屋のさらなる飛躍を視野に入れ、株式会社化に向けての活動や店舗開発など、「雪国ならでは」のビジネスを展開していきます。
BEFORE
- デザインの力が生かされた地域ブランドの立ち上げの激戦時代。価値を高めるためのブランドコンセプト設定が必須。
- 前例のないブランド構築をスタート。にいがたの「雪」に新たな価値を見出したい!
- 新たなブランド立ち上げに際し、インパクトがありつつ、商品の上質感を体現したプロモーションがしたい!
AFTER
- 雪室理事会で、組合全体で意見・情報交換。各企業、商品開発・営業・広報面でイノベーションを起こす。
- 天然雪をエネルギー資源として活用し、企業誘致、観光誘致も発生している。新潟地域や、中小企業を巻き込んだどこにもない全く新しいブランドとして誕生した。
- ネーミングにもしっかりとブランドのストーリーを感じさせるネーミングの設定を行う。クオリティーの高さ・雪室屋らしさを追求し、プレミアム感を表現したロゴや商品展開を考案。今後の展開がしやすいロゴマークとその他ツールを制作を行った。
<ブランド情報> にいがた雪室ブランド事業協同組合 事務局 〒950-0943 新潟県新潟市中央区女池神明3−4−9 越後雪室屋ブランドサイト
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