6次産業化で可能性を広げる。「エディブルフラワー」という新市場を開拓するブランド戦略。
株式会社脇坂園芸は、農薬を一切使わずに育てる、食べられる花「エディブルフラワー」の生産・販売を2013年から本格的にスタートしました。当時は全国的にもまだまだ生産者が少ない分野であり、どのようにPRし販路開拓して行くか、全く手探りの状態だったといいます。脇坂社長によると、「当初は、PRなんて自分たちでやれば良い、程度の認識だった」とのこと。行政センターの紹介で、6次産業化プランナーである弊社代表と会うことになり、新ブランドの開発が始まりました。
1.課題
全国的にも認知度の低い「エディブルフラワー」を、誰にどう伝えるか。商品そのものが持つ価値や、脇坂園芸だけのストロングポイントを抽出することと、誰をターゲットに設定するかが最初の課題でした。
また、このプロジェクトは、生産者が加工と流通・販売まで手がける「6次産業化」の取り組みでもあり、新ブランド構築やPR面の課題解決と並行して、事業計画の根本から検討すべきことが多岐にわたりました。「エディブルフラワーの聖地を創る」をブランドの目的とし、後に立ち上げる直売所の運営まで見据えてのスタートとなりました。
2.解決の方向性
当時はまだ手がける生産者も少なく、主産地であった愛知県から遠方へ発送すると届く頃には花がしおれてしまうというような状況。そこで、「食べられる花」の認知度を高めるために、まずは東日本エリアの料理人や飲食業界の関係者をターゲットとしました。阿賀野市役所・6次産業化プランナー・地域振興局の三者が手を組んで、結婚式場やレストランなどの営業先をリストアップ。新たな食材としての魅力を伝えるレシピ開発を進め、リーフレットなどのツールを作成しました。
PRポイントとしたのは、農薬を使用しないという脇坂園芸独自の強みと、クオリティの高い商品イメージ。「安心・安全で新鮮なエディブルフラワーと言えば脇坂園芸」として業界に認知されるよう、食のイベントや商談会等に積極的に出展して行きました。
行った活動
- 商品開発
- 販売営業体制の構築
- 広報、営業計画構築
- ネーミング
- ロゴ
- リーフレット
- パネル・のぼり等展示会ツール
BEFORE
- エディブルフラワー自体の認知が低い。商材そのものの認知を広めつつ、脇坂園芸の知名度も高めたい。
- BtoB開拓に向けてターゲット設定やブランドコンセプトの決定と、それを反映した営業ツールが必要。
- BtoC向けに、より届けやすい商品開発や展開方法、販路を得たい。
AFTER
- ブランドの認知拡大とメディア露出の連鎖、その相乗効果で「エディブルフラワーと言えば脇坂園芸」に。
- 東京の結婚式場などにも使用してもらえる商品に。新潟県内の飲食店ではもはや普通に使用される食材となった。
- 直売所の運営と加工品のラインナップ充実で、県外での販路拡大・認知向上。
先の事業展開を見据えたブランドロゴ開発
最初にターゲットとした結婚式場やレストランの料理人にクオリティの高さと信頼感をアピールする、エンブレム調のロゴを考案。なおかつ、後のBtoC展開も見据え、新しくてかわいいもの好きな女性に手にとってもらえるよう、おしゃれでカジュアルな雰囲気も持たせました。
認知拡大とオンリーワンの価値を伝える効果的な営業ツール
リーフレット、ブースパネル、のぼりなどのツールは、食のイベントや商談会等で認知の拡大を図る重要な役割を果たします。ビジュアルのインパクトで目を引くだけでなく、農薬を使わない安心・安全な栽培方法や、手作業で大切に育てることで実現する高品質など、脇坂園芸だけのアピールポイントを盛り込むことで、効果的な営業ツールとなりました。
一般消費者に届けやすい商品の開発と展開プラン
「エディブルフラワーの聖地を創る」をキーワードに、直売所「エディブルガーデンSoel(ソエル)」を運営。一般消費者が手に取りやすい加工品のラインナップも充実させ、BtoCでの認知拡大にも取り組んでいます。
得られた成果
認知拡大とメディア露出の連鎖により脇坂園芸の名前が広まり、販路拡大、社員増員、売上向上と、順調に推移しているという嬉しいお声をいただきました。新潟県内の飲食店では、エディブルフラワーがもはや珍しいものではなく普通に使用され、東京の結婚式場などとのお取り引きも増えています。 加工品のラインナップを充実させることで、県外の販売店舗も拡大し、直売所にも県外からのお客様が訪れるなど、まさにエディブルフラワーの聖地となりつつあります。
また、「日本エディブルフラワー協会」に中心メンバーとして参画し、農産物としての認知度を全国的に広める活動を展開中。一企業としての動きだけにとどまらず、業界全体を牽引するパワーと意気込みで、精力的に活動されています。
依頼して良かったと一番感じたのは、やはりクオリティの高さです。ターゲットを明確に意識し、今後の展開まで見据えた提案が頼もしく、「ブランディングの重要性」を感じました。また、関本社長に各分野で活躍する「人」を紹介していただいたことも後々の反響につながり、さまざまなメディアに取り上げてもらったのも相乗効果のひとつになりました。総合的に言うと「ブランド構築は感動を呼ぶ」ということです。デザインやメッセージ、売り方、見せ方が、人の心を動かすのですね。
提案していただいたブランドメッセージの一文である、“Carpe diem”=その日の花を摘め(古代ローマの詩に登場する句)の意味合いに添って、今という時を大切にしながら、企業存続のために全力を尽くしたい。食分野における新しいコラボレーションも考えていますので、パブリックさんとは長いお付き合いになりそうです。
株式会社 脇坂園芸
〒959-2053 新潟県阿賀野市境新209
http://wakisaka-engei.com/
※記事内容は取材当時のものです