伝統を守りながら、新たな味に挑戦するブランドへ【小林醤油店|リブランディング】
昭和10年より、新潟県村上市(旧:荒川町)で味噌・醤油醸造業を営む小林醤油店さま。
家族経営の小さな蔵で、仕込みから瓶詰め・ラベル貼りまで全て手作業。創業から80年を経た現在も、原料から仕入れて自社で仕込み一年間かけてじっくりと熟成させる伝統の製法を守っている、老舗の醸造蔵です。
大手メーカーのように大量生産はできませんが、地元旅館の名物「はらこ丼」に使用され、スーパーでは定番商品として扱われるなど、長く愛される製品を手がけています。
2011年ごろ、4代目となる小林徹平さんが帰郷し、家業に参入。「新たに開発した “鮭節を使っただし醤油” のパッケージを作りたい」とのご依頼で、弊社にお問い合わせをいただきました。
1.課題
和食離れや外食・中食の増加により全国的にも醤油の消費量が減少する中、多くのメーカーがめんつゆなどの醤油加工品を手がけるようになっていました。そんな中、小林さんは、家庭の定番調味料として長年購入し続けてくれる常連のお客様も大切にしながら、新しい客層を取り込むための商品開発に力を入れていました。
新商品にかつお節ではなく鮭節を選んだのは、他メーカーに差を付ける独自性を出しながら、村上のPRにも繋がる商品にしたいという意図があったそうです。
これから先も長く愛されるブランドとして在り続けるためには、手づくりでこだわりの品質を守る「小さな醸造蔵」であることを価値として訴求すること。さらに、これまでのブランドイメージを保ちながらも、新しい商品展開も効果的に伝えるデザインが必要な段階に来ていました。
2.解決の方向性
最初にご依頼いただいた新商品の「だし醤油」は、現代の食卓事情を考慮し、調理時に使用するのではなくテーブルで使う調味料としての位置付けに。大瓶から移し替える手間がなく、そのまま置いても見栄えの良い形状のパッケージという条件で、瓶を探すところから始めました。
また、続いてご依頼いただいた既存品「本醸造しょうゆ」のパッケージでは、定番商品をさらに躍進させこの先も長く残り続けるように、ロゴのリニューアルをご提案しました。
3.実際の構築ステップ
- ロゴマーク
- パッケージ
- ラベル
- リーフレット
- Webページ
- 展示会用販促物(パネル・卓上POP)
あえて “醤油らしくない” パッケージに
新たなターゲットを視野に開発された、鮭節が出汁ベースの醤油『鮭むらさき』。ラベルやパッケージを醤油らしくないもの、おしゃれなものにしたいというご依頼でした。瓶の選定にあたっては若い世代の食卓事情を考慮し、当時はまだ見かけることが少なかった細長い角瓶を採用。大瓶から移し替える手間がなく手軽に使えること、そのままテーブルに置いても見栄えが良いことなどが決め手でした。
さらに、洗練された印象の商品ロゴ、雫のシルエット部分が抜きになっているギミックなど、細部までこだわったラベルに仕上げました。また、商品と会社の魅力をより深く伝えるリーフレットも併せて制作しました。
これからの躍進を支える目印
続いてご依頼いただいたのは、『本醸造しょうゆ』のラベルリニューアル。これまで長く愛されてきた、小林醤油店さまの定番商品のひとつです。主軸となるアイテムのリニューアルは、売り上げへの影響だけでなく、ブランディングの観点から見ても重要なポイントとなります。ラベルデザインの変更にとどまらず、ブランドの見え方から検討し、いくつかのブランドロゴをご提案しました。
最終的に選ばれたのは、醤油店らしさと屋号「マルコ」を残した案。昔からのお客様、マルコマークを目印に購入してくださる年配の方にも認知してもらいやすいロゴに決まりました。
自慢の味を届けるポップなキャラクター
商品開発に力を入れていた小林さんからの次なるご依頼は、和風辛口ソースのパッケージ。商品には「味噌×ハバネロ」と「醤油×ゆず×ハバネロ」の2種類があり、『醸すこ(かもすこ)』というネーミングが決まっていました。先に手がけた『鮭むらさき』やリニューアルしたブランドロゴの雰囲気は意識せず、完全に別路線の商品としてポップな印象にしたいというご依頼。そこで、弊社からはキャラクターとイラストを使用する案をご提案しました。
聞いたことのない商品名とインパクトのあるビジュアルで目を引きつつも、どんな調味料なのかが伝わらないと購入してもらえません。かけるだけで料理の味を変えられる手軽さが伝わるようにレシピ提案を盛り込んだり、商品名『醸すこ』の由来、日本人の味覚になじむ味噌や醤油を生かしたソースであることを訴求しました。
『醸すこ』のパッケージは、新潟アートディレクターズクラブ(NADC)2016で審査員特別賞を受賞。「食卓に置いておくと楽しくなりそう」という嬉しいコメントをいただきました。
『鮭むらさき』と同様、調理時ではなく食卓での使用シーンを想定した商品開発とデザインが功を奏し、魅力をうまく訴求できる商品となりました。
県産小麦の復活を後押しする新商品開発
新潟県外の醤油製造メーカーの商品を見ると、原材料に地元の小麦や大豆を使用した製品がある一方、県内では県産小麦を使った醤油を見かけませんでした。そこで小林醤油店が取り組んだのは、村上市の生産者から仕入れた原材料で仕込む、地場産素材にこだわった醤油の製造です。
一度は生産量ゼロまで落ち込んだ新潟県産小麦でしたが、雪に強い品種「ゆきちから」が開発されたことで、小麦を作る農家が増え始めていた頃でした。小さな醸造蔵だからこそできる醤油を作り、それが生産者や地域をPRする商品になればと考えて開発したそうです。
絶滅の危機から復活した朱鷺になぞらえ、これからの新潟の象徴となってほしいという願いを込めた新商品は『朱鷺むらさき』。弊社からご提案したロゴにも朱鷺をモチーフとして取り入れ、小林醤油店さまの歴史や製法のこだわりが感じられるデザインに仕上げました。
4.まとめ
展示会や商談会の場でバイヤーから興味を持ってもらえる機会が増え、地元だけでなく、新潟駅の土産品店や県内各地の道の駅などへと販路が拡大しました。特に『醸すこ』は、新タイプの調味料であることや斬新なパッケージデザインが好評で、テレビや新聞など多くのメディアでも取り上げられました。
地元村上市で伝統の製法と品質を守りながら、時代に合わせた新しい味も生み出していくブランドとして、さらなる挑戦を続けています。
BEFORE
- 昔懐かしい家庭の味として長年愛される定番調味料を手がける「地元の醤油店」。
- 地元スーパーでの販売や飲食店との取り引きが主な販路。
AFTER
- 他社製品に埋もれない独自性の高い商品開発と、その特徴を効果的に訴求するデザインで、ブランドイメージをブラッシュアップ。
- 新潟駅の土産品店や県内各地の道の駅などで展開。メディア露出の効果もあり、商品・ブランドともに認知度が高まる。
<ブランド情報> 小林醤油店 〒959-3122 新潟県村上市大津543-1 http://www.kobayashi-shoyu.co.jp/
※記事内容は取材当時のものです
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