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RECRUITING

仏教の教えを届け、人々の支えになる存在に。古いイメージと慣習を変える、寺院のサービス開発。

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新潟県小千谷市に位置する浄土真宗本願寺派の寺院、極楽寺。仏教の教えを伝えることを通して人々の役に立つ存在であるようにと、さまざまな活動に取り組んできました。観光スポットとして名が知られるような大きな寺院ではありませんが、地域の行事やイベントの会場としても活用され、門徒に限らずあらゆる立場の人にひらかれた場となっています。

時代が変わり、寺院と人々との関わり方も変わっていく中で、自分たちの考え方を多くの人にわかりやすく伝えたい。そして、それに共感する人とつながる新しいサービスや仕組みをつくっていきたい。そんな思いから構想中のアイデアはたくさんありましたが、うまく実行に移せていないものも多い…というところで弊社にご相談をいただきました。

 

1.課題

極楽寺では、困っている人や苦しいことを抱えている人の支えになるのが、仏教の本来の役割だと考えています。

けれど、多くの人にとって寺院は身近なものではなくなってきており、むしろ、葬儀や法事の時にだけ関わりを持つ特別な場所と捉えられているのが現状です。

生まれ育った地域を離れて暮らす人も増えていく中で、檀家制度のように家単位で所属する仕組みを維持するのは難しく、その慣習自体が仏教に触れる機会をかえって遠ざけているような側面も見えていました。

 

2.解決の方向性

このような背景も踏まえて、世間一般の人が仏教の教えを取り入れやすくなるようにと、これまでもあらゆる切り口から活動を行ってきました。

墓地がないことも極楽寺の特徴のひとつです。身分の差などなく誰もが平等であるという考えに基づき、境内にあった墓地を全廃して納骨堂をつくりました。すべてのお骨を一緒に納める形をとることにより、墓守の心配をすることなく、身分・経済格差なども関係なく利用してもらうことができます。

こうした極楽寺の考え方に共感する人とつながる仕組みを構築することと、より広く、仏教の教えが現代の人にも伝わりやすくなるようなサービスや活動を展開すること。大きく分けてこの2つの方向が考えられました。

具体的には、 ①門徒(檀家)制度を廃止し、時代に合わせた会員制度を開発する ②現代の人に仏教の教えをわかりやすく伝えていくためのサービス・仕組みを開発する ③これらを効果的に発信するツール制作 に取り組むこととなりました。

 

実際の構築ステップ

  • スタッフ勉強会
  • ヒアリング
  • 事業開発スプリント
  • 各種ツール作成(進行中)

スタッフ勉強会と住職へのヒアリング

弊社スタッフにとっても、普段あまり馴染みのない仏教の世界。まずは仏教全体の概略を掴むため、スタッフ勉強会と住職へのヒアリングを行いました。

仏教の考え方、住職の考え方、仏教のあるべき姿などを聞いて理解を深めるとともに、プロジェクトの目的と意義を明確にしていく。

事業開発スプリント

目的・意義について全員で共通認識を持った上で、サービスの開発に入ります。事業開発の初期段階は特に、目的がブレたり、考えがまとまらなかったりして、時間ばかりが過ぎてしまいがちなもの。それを防ぐために、手順を追って進めていきます。

[不安・疑問点の洗い出し、課題の整理]
プロジェクト全体に対する漠然とした不安や疑問点を洗い出し、明確な課題として共有する。早い段階から全員が発言し、お互いの考えを知っている、という関係性になることで、その後のプロジェクトの精度を上げることにもつながる。
[アイデアフラッシュ]
良いアイデアはどこかから降りてくるのではなく、既存のアイデアの組み換えやブラッシュアップによって生み出されるもの。競合他社の取り組みや異業種の事例など、良い材料を元に自分たち独自のアイデアを生み出す。
[実行計画作成]
採用するアイデアが決まったら、行動のジャンル分けと優先順位をつけていく。アイデアを具体的なアクションに落とし込み、意味合い・担当・スケジュールを見える化した実行計画を作成。あとはやるのみ!という状態に。

極楽寺の考え方を伝え、より良い関係をつくる

もともと住職が持っていた多くの構想を基に、どこから取り組むべきか?どのようにしたらより伝わりやすくなるか?といったことを一緒に考えながら、制度の構築とツール制作を進めていきました。

門徒(檀家)制度を廃止し、会員制度にする。長らく続いてきた慣習を変える大きな決断です。パンフレットの作成にあたって特に考慮したのは、新規会員への伝え方でした。

例えば、納骨堂について。コストや利便性の面から近年注目されている納骨堂ですが、極楽寺が約100年前に納骨堂をつくったのは、仏教の教えに沿うものでありたいと考えたからです。そのような考え方や特徴的な運用形式であることをパンフレットできちんと伝え、さらに申込み時には住職が直接お話しする機会を設けています。

やみくもに会員を増やすのではなく良い関係性を結ぶことを優先し、新規会員と従来からの門徒、両方を大切にしていけるサービス構築を目指しました。

会員制度のご案内[パンフレット]
寺院や僧侶と聞くと、何となく近寄りづらいイメージを持たれやすい。それを払拭し、「ひらかれたお寺」として印象づけることを意図した。住職の物腰柔らかな雰囲気と、消しゴムはんこ作家としても活動していることなどから、色使いやモチーフのヒントを得た。
「お気持ちで」のように表現されることが多い、お寺の費用。金額設定が不透明・敷居が高いのではないか、といった不安を取り除くために費用を明示した。また会員特典(後述の参拝帳など)も設定し、さまざまなシーンで身近な存在として関係をつないでいく。
参拝帳[会員カード]とオリジナルアイテム[マッチ]
会員が本堂・納骨堂にお参りするごとに参拝印を押すスタンプカード。ポイントが貯まるとマッチや線香などの極楽寺アイテムがもらえる。これまでは既製品を配布していたが、オリジナルアイテムとして順次制作していく予定。定期的に来たくなる仕組みを用意することで、法事の時だけでなく、何となくふらっと立ち寄ってもらえるお寺でありたい。
極楽寺なんでも相談室[掲示板のコンテンツ]
本堂が奥まった位置にあり、立地の面でも壁を感じさせてしまう懸念があった。そこで、道路沿いに掲示板を立て、イベント告知などに使用。さらにtwitterで展開している「質問箱」を近隣の人たちともやり取りできるよう、投稿用のシートを用意した。誰かの悩みとそれに対する住職の考え方を知ることで、仏教に興味を持つきっかけになるかもしれない。

現代に即した関わり方で、地域の人々と支え合う

近隣エリアの寺院と共同で展開する「ダーナダーナ」という活動があります。お供え物をフードバンクに提供する動きが全国的に増える中、寺院から一方的に支援するのではなく、より対等な関係性になれないかという視点から発案されました。

主な参加者は、ひとり親など経済的困難にある家庭の方。「ダーナ」はお布施のことで、「自分の大切なものを提供する」という意味があります。境内や本堂を掃除してもらった方に御礼をお渡しするというシンプルな活動ですが、寺院と参加者がお互いを支え合う仕組みになっています。

多くの寺院は、広大な境内の落ち葉掃きや草取り、本堂の清掃といった作業にかなりの人手が必要ですが、清掃員を常時雇用するのは費用面で難しいです。一方、ひとり親世帯で子育てをしながら働く場合、空いた時間で収入を少しでも増やしたいと思っても、子連れ可能で時間の融通が利く仕事はなかなかありません。

そのような両者の事情を合わせ、少しでも解消しようとするのがダーナダーナです。単純にお寺が助かる・参加者が収入を得られる、という点だけを求めるのなら他に適した方法があるかもしれませんが、この活動は、交流が生まれたり、悩みごとを相談するきっかけになったりすることで、仏教本来の役割を担うことができるものです。

ダーナダーナの広報・集客ツール[フライヤー]
親子での参加も可能なので、まずは気軽に登録してもらいたい。親しみやすいビジュアルと簡潔にまとめた説明イラストで、わかりやすく伝えることを意図した。活動開始からまだ数ヶ月だが登録者数は120名を超え、日程によっては定員が埋まってしまうなど、着実に広まっている。

浄土真宗の教えを、広く・わかりやすく伝える

一般の人に仏教の教えを伝える方法のひとつとして、法話があります。堅苦しくならないよう工夫されていることが多いのですが、それでもやはり退屈なイメージを持たれたり、何か特別なものとして敬遠されやすいようです。

もっと気軽に仏教に触れてもらうにはどうしたら良いか。世間一般の人々に馴染みやすい方法でアプローチできるものを検討したところ、アニメーション動画という形になりました。他のツールと同様に、素材のベースは住職の消しゴムはんこです。

また、あえて極楽寺の名前は前面には出さず、「たちどまるラボ」というプロジェクト名での展開を予定しています。広めたいのはあくまでも浄土真宗のことであり、極楽寺と接点を持つかどうかは後々の話。まずは身構えずに観てもらい、「立ち止まる、って大事だね」と共感した人に、考え方のひとつとして取り入れてもらうことを企図したものです。

たちどまるラボの広報動画[アニメーション] ※制作中
住職が考えたシナリオを基に、説明が多くなりすぎないよう調整。より伝わりやすく、かつ面白さも感じてもらえるように、表情の付け方やエフェクトで工夫している。

マッチに続くオリジナルアイテム第二弾の制作や、利用者から要望の多い御朱印帳、ペットのお墓など、今後もさまざまな施策が予定されています。

 

BEFORE

  1. 仏教や寺院に対する世間一般の古いイメージ(敷居が高い・葬儀など特别な時だけの関係、等)を変えたい。
  2. 仏教の本来の役割をもって一人ひとりと向き合い、困りごとや苦しいことを抱える人の支えになる存在でありたい。
  3. 浄土真宗の教えを世間一般の人に広く・わかりやすく伝え、考え方のひとつとして日常に取り入れてもらいたい。

AFTER

  1. 代々続く家単位の制度ではなく、会員制というつながり方に変更し、費用も明示している。また、ダーナダーナの活動を通して、寺院と地域の人々との関わり方を対等なものに。
  2. 参拝印を押してポイントを貯める会員カードや、掲示板でのお悩み相談など、いつでも気軽に立ち寄ってもらい、身近に感じてもらうためのサービスができた。
  3. あえて極楽寺の名前は前面には出さず、法話よりもさらに気軽に観てもらえるアニメーション動画を作成。SNSなど、一般の方に馴染みやすい形で展開していく。
<企業情報>
浄土真宗本願寺派 極楽寺
〒947-0027 新潟県小千谷市平成2−5−7
https://gokurakuji.info/
※記事内容は公開当時のものです
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