提出前日にまさかのデザイン変更!?ダリ版画展ポスター制作秘話
みなさん、こんにちは!広報担当のきらです。
『日本タイポグラフィ年鑑2023』において審査委員賞を受賞した、新潟県立近代美術館さまの『ダリ版画展 奇才?天才? その知られざる世界』のグラフィックデザイン。
ダリが持つ奇妙で夢想的な世界観を紙型で表現した斬新なアイデアが、審査委員の方からも評価されました。
今回は、斬新なアイデアを取り入れたこの作品の制作秘話について、デザイン&アートディレクションを担当したアートディレクターの五十嵐 祐太さんに語ってもらいました!
ーー美術展のポスターは何度か制作されていると思いますが、普段どんなふうにデザインを考えていきますか?
そうですね。美術展のポスターって、いろいろと決まりごとがあるんです。とくに絵や写真には著作権があって、ポスターに使うには基本的に使用料が発生するので、「この絵をメインビジュアルにしてください」とか「使える写真や絵はこれです」という指定があります。それをもとに作っていく感じですね。
ーーでも、今回のダリ版画展のポスターには写真や絵は入っていないですよね。
それが、ここに至るまでにいろんな経緯がありまして...。実は、はじめはダリの肖像写真を使った案もあったんですよ。写真をベースにした案と文字だけの案で何パターンか作っていて。
でもデザインを提出する前日のお昼ごろに「写真の使用はなしでお願いします...」って突然電話が来たんです。
ーーなんと!前日にですか...!?
そうなんですよ。えーっ!?と思って美術館の方に聞いたら、いろいろな事情があることが分かって。そういうことなら仕方ないなと。
とはいえ、展覧会の日程はもう決まってるからポスターも間に合わせなきゃいけなくて。「じゃあ、あと半日くらいでなんか考えてみます」って、そこから写真なしの案にしぼって、追加案を考えはじめました。
レイアウト自体はだいたい決まっていたので、あとは組み合わせを少し変えていく感じでした。もともと写真が入っていた案を文字だけにして配置を変えてみたり、とりあえず写真を無くしただけの案もありますね。あとは、ダリの有名な溶ける時計をオマージュしたものとか、髭を活かしたシンプルなものとか。
ーーたくさんの案がありますが、五十嵐さんの中では「これがいいな」という案は何となく決まっていたんですか?
僕は最初、時計をオマージュしたデザインを推してたんですよね。自分の中では、ダリって「髭」と溶ける時計の「歪み」っていうのが二つの大きいキーワードで、どちらかというと「歪み」を表現したデザインで行きたかったんです。「髭」だけだと普通というか、なんか面白くないなと 笑
最終的に選んでいただいたのが文字だけの案だったので、何か癖をつけたいと思って、いろいろと検証していきましたね。ロゴをひっくり返してみたり、文字を大きくしてみたり、左右を入れ替えてみたり、髭を入れてみたり、「ダリ」の文字をいじってみたり。
それでも、なんかまだ物足りないなと思って、ポスター自体の形を変えてみたら歪みが表現できるんじゃないかと思いついたんです。
ただ、それをやろうとすると予算オーバーなんですよね。でも、やりたいからとりあえず相談してみようと思って、ちゃんとプレゼンしました。これは自分のエゴなのかもしれないんですけど、形を変えた方がより伝わると思ったんですよね、ダリらしさが。
ーーそれであの特徴的な形になったんですね!でも、予算の問題はどうやってクリアしたんですか?
印刷の色数を減らしたんです。ポスターにスペイン大使館のロゴが入ってるんですが、これが元は4色カラーだったんですよ。他は黒だけだったので、このロゴをモノクロに変えられたら一色の印刷でいけると。だから、モノクロにして金額を抑えれば、紙の形を変えられるんじゃないかと思ったんです。
それで美術館の方に「ロゴをモノクロで使ってもいいか、大使館に確認してください」ってお願いしたら「OKです!」って連絡がきて。印刷が一色にできたおかげで、歪みも表現できたんです。
これ、ちゃんと型を作って抜いてもらったんですよ。ポスターの型抜きはなかなか珍しいみたいで、審査会とかでも「型作ったの!?」って驚かれますね 。
ーー完成までにそんなドラマがあったんですね...!美術館の方からの反応はどうでしたか?
ありがたいことに、すごく評判がよくて。テレビの展覧会情報のコーナーで取り上げられたり、休日の1日の来場者数がかなり多かった日があったみたいで、喜びのメールが来たりもしました。
そのおかげもあったのか、他の展覧会のポスター制作や周年ロゴ制作の話もいただけたり、良い流れができたと思います。
ーー日本タイポグラフィ年鑑には、どんな経緯で応募したんですか?
社内で「コンペに積極的に出しましょう」って話は昔から出てたんです。あるコンペでは社内のデザイナー全員でポスターのデザインを出品したこともありますし、個人的にもコンペにはときどきチャレンジしてました。
そんな流れもあり、社内で海外・国内アワードの情報をリストアップしてくれて「そろそろ日本タイポグラフィ年鑑2023の締切です」ってアナウンスがあったのかな。ちょうどその前にNADC(新潟アートディレクターズクラブ)で、ダリ版画展のポスターが新潟ADC賞をとっていたんですよ。アワードでも評価されているし、文字がメインのポスターということもあったので、この機会に全国に挑戦してみようかなと思って応募しました。
ーー審査委員賞の受賞が分かったときは、どう思いましたか?
封筒で通知書が届くんですけど、その前にネットで結果を見まして。自分の名前を見つけて「あっ、ある」って思いました 笑
ーーめちゃくちゃ冷静ですね 笑
正直なところ、受賞したときは審査委員賞がどういうものかよく分かってなくて...。
出すだけ出そう!って感じで、締切ギリギリに出したんですよ。すっごいバタバタで「とりあえず出せた!よかった!間に合ったー!」って感じだったので、どんな賞があるのかとか、海外の人もいるんだとか、応募総数がどのくらいかとか、あとから色々な情報を知ったんですよね。それが分かって「この中に入ったんだ」って実感が湧いてきた感じです。
だから、見た瞬間は「あ、入った...!?」みたいな感じでしたけど、周りのみんなは喜んでくれましたね。
ーー4月には表彰式もありましたが、参列されてみてどうでしたか?
嬉しい気持ちもありつつ、やっぱり出すからには上の賞が欲しいなっていう気持ちになりましたね。全国のすごい人たちが集まってる場だったので、受賞式の場でベストワークを見たりスピーチを聞けたのは、やっぱり刺激になりました。
ーー五十嵐さんがこれから挑戦してみたいこと、目指したいものはありますか?
海外のアワードを狙いたいですね。実は紙に書いてデスクにも貼ってあるんです。
言葉にしたり声に出すことはもちろん大事だと思うんですが、書いてすぐ見えるところにないとだめだなって思ってて。
去年までは「NADCグランプリをとる」っていうのを紙に書いてずっと貼ってたんです。5,6年くらいかな?ずっと貼っていて、この間やっと獲れたのではがしました。それに代わって、今は「海外のアワードを獲る」って貼ってあります。
ダリ版画展のポスターも、今海外のアワードに出品してるんです。秋ごろには結果が出る予定なので、楽しみです!