部下との面談、何を話すべき?うまく進めるための3ステップ
みなさんの会社では、『1on1ミーティング』に取り組んでいますか?
『1on1ミーティング』とは、社員の成長促進と企業の組織力強化のために、定期的に上司と部下が一対一で行う面談のこと。10年ほど前からさまざまな企業で導入されるようになり、今では企業規模に関わらず約40%以上の企業で導入されていると言われています。
この春、会社の体制や所属部署が変わったことで、『1on1ミーティング』を実施することになった上司の方も多いのではないでしょうか。
「何を話せば良いのだろう…」「進め方がいまいち分からない...」 今回はそんなお悩みを持つ方に向けて、より良い面談の進め方や部下と対話するときの注意点を3つのステップに沿ってお伝えします。
部下との面談が難しいと感じたことのある方、面談に苦手意識のある方に、少しでもお役立ていただけると幸いです。
【Step1】面談の目的を明確にする
最初に押さえておくべきポイントは、面談を実施する目的を確認すること。これは経営層や上層部の方針として示されるものですので、まずこの点をきちんと把握しておきましょう。
企業が面談を取り入れる目的は、次のようなものが考えられます。
●離職防止
●従業員エンゲージメント向上
●人材育成
●チームマネジメント
いずれも、多くの企業でよく挙げられる課題です。
これらは相互に影響し合う部分もあるため、単純にひとつの課題だけに絞られるわけではないかもしれません。しかし、特に優先したい課題は年度方針などの形で提示される場合が多いはずです。
面談の準備に取り掛かる前に、「面談の目的は何か?」「面談でどんな課題を解決したいのか?」について、今一度見直してみましょう。
【Step2】目的に応じたテーマを決める
【Step1】で確認した目的をそのまま面談で話すテーマにしてしまうと、話題の幅が広すぎて上手くいかないことがあります。目的を踏まえて、もう少し具体的なテーマを設定しましょう。
面談で上司がやるべきことのひとつは、部下の成長をサポートし障害になっていることを取り除き、自分で進んでいけるよう導くこと。つまりコーチングです。
テーマを決めることは、コーチングの基本でもあります。会社の目的と部下の状況の双方を俯瞰的に捉え、良く考えて設定しましょう。
− 成長課題についての気付き
− 行動計画の振り返り
●離職防止が目的の場合
− 不満の聞き取り、改善策検討
− コミュニケーションの向上
●従業員エンゲージメント向上が目的の場合
− 強みを仕事に活かす方法
− 周囲との関係性
●人材育成が目的の場合
− 全体方針や戦略の共有
− 動機やキャリア目標の確認
●チームマネジメントが目的の場合
− 個性の把握
− 意見の吸い上げ
【Step3】いざ面談!コツと注意点
部下の現状に相応しいテーマが決まったら、いざ面談。今回は特に、面談に慣れていない上司・部下の場合を想定して、4つのコツをピックアップしました。
❶テーマを共有する
テーマは自分の中だけで決めておくのではなく、相手にもきちんと共有しましょう。
上司との面談となると、多くの部下は緊張したり「何を話すのだろう?」と不安に感じるものです。
この面談は何の場か、何について話し合うのかを明確にすることで、部下の不安を解き、安心して話してもらえる状況をつくりましょう。
そのためには、面談の前に以下のようなことを自分の中で整理しておきましょう。
- 会社として面談の目的は何か
- そこへ向けて今回話し合うテーマは何か
- テーマに関して自分の考えはどうか
- 相手の考えを引き出すために、どんな質問をすると良さそうか
ただ、これは自分の意図した流れ通りに面談を進めるためのものではありません。
あくまでも、面談は部下のためにやるもの。相手が自分で考え、気付き、行動に移すことができるようにサポートするために実施するものです。
部下の反応や返答に応じて柔軟に対応するために、複数の可能性を想定して準備しておきましょう。
❷傾聴の姿勢で臨む
テーマを共有したら、それについてどう考えているか部下の意見を聞きましょう。
もちろん上司も自分の意見を伝える必要はありますが、そのバランスは重要です。上司は聴く方に重点を置くことを意識しましょう。
上司が話している時間は、部下が聞き手になっている時間です。部下に聞かせている時間が長くなりすぎてしまうと、部下のための面談になりません。一般的に、8対2(※上司が話す時間は2割)くらいを目指すのがちょうど良いとよく言われます。
ところが、実際には、上司の方が話しすぎてしまう現象がよく起こります。これは一体なぜでしょうか。
理由のひとつは、上司が「自分の方が優秀でいなければ」「答えを出してやらなければ」と思ってしまいがちだからです。確かに上司の方が経験豊富で、答えをすぐ出せるかもしれません。でもそれは、あくまでも上司の考えです。
部下はただそれを与えられても動けるようにはなりません。部下が自分で考え、答えに気付き、自力で実践してもらうようにサポートするのだと、頭を切り替えて臨みましょう。
❸沈黙を埋めようとしない
面談に慣れていないとやってしまいがちなのが、沈黙を埋めようとすることです。
部下が自分の考えをまとめるために、少し時間が必要な場合もあります。そこで上司が質問を補足したり、例を交えて説明したりすると、そこから上司が話す時間=部下に聞かせる時間が始まってしまうのです。
部下があまりにも考え込んでいるようで「質問がわかりづらかったかな?」と心配になったら、質問の意味は伝わっているか、ただそれだけを尋ねるのみに留めて、反応を待ちましょう。
うなずく、相づち、オウム返しなど、よく言われる「話を引き出すスキル」も大事ですが、まずは自分が聞き手に回ることで、相手が考える時間や話す時間を作り出しているのだと意識できるようになると、「8対2」のバランスで部下に話してもらえるようになっていきます。
❹部下のサポートになる質問をする
傾聴の姿勢を踏まえた上で、効果的な質問をすることで、より部下の成長をサポートすることができます。
質問とは言っても、面談中の質問は相手のためのものです。自分が知りたいことを知るための質問とは異なります。
上司は普段、進捗を確認したり、トラブル発生時に素早い状況把握が必要だったりと、「情報収集のための質問」がどうしても多くなります。それをそのまま面談に持ち込んでしまわないように、意識しましょう。
部下の思考をサポートするために、以下のことを意識して質問してみると良いかもしれません。
- 視点を変える
- 気づきやひらめきを促す
- 問題をはっきりさせる
- 未来を想像させる
テーマ共有のところでも触れた通り、面談の成否は事前準備から始まっています。自分の意図に沿わせるためではなく、部下の反応によってさまざまな対応ができるように事前に考えておきましょう。
●オープンクエスチョンを使う
YES/NOで答えさせるクローズドクエスチョンは、二択で選ばせる形なので、問い詰めるような雰囲気になりがちです。面談の時は視点を広げやすいオープンクエスチョンの方がおすすめです。
●答えを誘導したり、選択を迫るような質問は避ける
自分が意図する答えを部下の口から言わせようとすると、不信感を与えてしまい逆効果になります。自分の考えがあるならばはっきりと短めに伝え、その後は必ず部下の考えを聞きましょう。
●正確な表現、シンプルな質問を心がける
部下を気遣うあまり曖昧な言い回しが多くなる。自分の中で整理しきれず、漠然とした質問をしてしまう。どちらも部下にしてみれば余計に答えづらくなるばかりです。質問は明確に。大きすぎる質問は小分けにしましょう。
●質問は一度にひとつ
ひとつ聞いて、答えを受け取る。コミュニケーションはひとつずつ完了させるのが基本です。一度にたくさんの質問を投げかけても、部下は受け止めきれません。よく考えられないまま、全部まとめて「大丈夫です!」のような答えが返ってきたりしてはもったいないです。
まとめ
改めて、部下との面談に向けて準備するべきことや注意点を見てみましょう。
面談の準備に取り掛かる前に、「面談の目的は何か?」「面談でどんな課題を解決したいのか?」を明確にする
【Step2】目的に応じたテーマを決める
会社の目的と部下の状況の双方を俯瞰的に捉え、具体的なテーマを設定する
【Step3】いざ面談!コツと注意点
❶テーマを共有する
❷傾聴の姿勢で臨む
❸沈黙を埋めようとしない
❹部下のサポートになる質問をする
いずれもコーチングの基礎と重なる部分が多いので、興味がある方はさらに深く学んでみてはいかがでしょうか。
本来のコーチングは、対話の終わりにアクションプランを作ります。話した内容をもとに、具体的にどういう行動により成果を出していくかを決め、それについて次回の対話で結果を確認するのです。
しかし、そもそも面談自体がほとんど初めてという場合は、最初からアクションプランまで辿り着こうとするとハードルが高いかもしれません。
心を開いて話ができる関係性になるには一定の時間や回数が必要です。焦らずに、最初の数回は信頼関係の構築だけに注力すると決めて取り組んだ方が良いでしょう。
面談が苦手…と思っているのは、上司だけでなく、部下も同じです。始めのうちは、「どう思う?」「何か話したいことや聞きたいことはない?」と聞いてもほぼ何も出てきません。何も考えていないのではなく、部下側も話したり質問したりする練習が必要なのです。
そのように考えると、難しいことのように感じていた面談も、少しは心を軽くして臨めるのではないでしょうか。
気負いすぎず、でも相手のための準備は入念に。日頃から部下のためを思って動いている上司の皆さんならきっと出来ることだと思います。
今回ご紹介したポイントのうち、ひとつでもお役立ていただけたら幸いです。
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