これからの時代の神社と人々との関わり方とは。守り続けるべき価値と、新たな伝え方を探る。
新潟市の中心部に位置し、市民に広く知られる認知度と歴史を誇る白山神社。併設の白山会館は、伝統と格式を守る結婚式場として多くの婚礼をはじめ、初宮参りや七五三といった人生儀礼の神事に利用されてきました。一方で、時代の移り変わりとともに人々の神社との関わり方や風習も徐々に変化。神社・会館ともに存在価値の低下が懸念され、新たなアプローチを模索し始めていた頃、人材育成やチームづくりに関するご相談と併せてお声がけいただきました。
1.課題
かつてのように結婚式といえば誰もが神前挙式を思い浮かべるような時代ではなくなりました。さまざまな選択肢がある中で、神社婚を選ぶ層は何を求めているのか。その層にどうやってリーチするか。神社という、ある意味では特殊な組織でありながらも、一般企業と同様にマーケティングの視点を必要としていました。また、近隣にあった市役所・区役所などの中心地機能が移転し、人の流れが変わりつつあったことも少なからず影響を及ぼしていたようです。立地エリア自体の集客力低下をカバーするための、積極的な広報・集客戦略の構築にも取り組むこととしました。
これらの他に、会館の内装について、やや古く事務的な印象を受けるといった物理的な面での課題も挙げられていました。
2.解決の方向性
新しいことに取り組む際には、不安や疑問、反発など、少なからず出るものです。どのような事業を展開していくにせよ、そこに関わるチームが機能しなければ、うまく進めることができません。事業プランの検討に先立って、人材育成と協力体制を整えるための取り組みから着手することになりました。※詳しくはこちらの事例記事をご覧ください
インナーブランディングの取り組みによってチームの基盤を整え、ベクトルを揃えた後、事業開発ワークショップを実施しました。時代に合った神社の提供価値、これからの時代の中での自分たちの役割とは、といったことを見つめ直し、具体的な事業アイデアに落とし込んでいく段階です。
神社婚を選ぶ層は誰か。何を求めているのか。そのターゲットに向けたサービスを構築していきます。
併せて、会館内装のリニューアル、ツール類の一新にも取り組みました。インナーブランディングで作り上げたCI(コーポレートアイデンティティ)を全体に反映することで、ブランドとしての姿勢を内外に伝えるものにしていきます。
実際の構築ステップ
- 7月 コミュニケーション基盤「ストレングスファインダー基礎」
- 8月 幹部チームの意思疎通強化「ストレングスマネージャー研修」
- 9月 コーポレート・アイデンティティ構築「エンゲージメントワークショップ」
- 10月 社内スタッフ共有
- 11月 「チーム事業開発スプリント」
- 12月 事業構築・ブランドツール作成
BEFORE
- 神前挙式以外にもさまざまな選択肢がある中で、神社婚を求める層にいかにリーチし、何を提供できるか。神社・会館ともに存在価値を改めて問い直すべき時期にあった。
- 周辺環境の変化により、立地エリア全体の集客力が低下。それをカバーするための積極的な広報・集客戦略が必要になっていた。
- 会館の内装がやや古く事務的な印象。神社としての歴史や品格を保ちながら、結婚式場らしい雰囲気づくりを必要としていた。
AFTER
- 神社が提供できる価値や自分たちの役割を見つめ直し、家族婚をサービスの中心に据えることに。方針の軸が定まったことで、ツールのリニューアルや広報展開を進めやすくなった。
- ターゲット層との接点となるホームページやパンフレット、広報素材などが揃い、神社からのメッセージを一貫して伝える準備が整った。
- 千本格子で美しく統一した壁面や、婚礼小物のモダンアートなどを配し、明るく格調高い空間にリニューアル。
時代に合った事業をチームで生み出す
これからの時代に神社が提供する価値、自分たちの役割とは。新たな時代にどんな未来を構築するか。チームで考えをまとめ、具体的な事業アイデアに落とし込んでいくワークショップを実施しました。一つひとつのアイデアは小さなものでも、組み合わせていくと差別化されたアイデアになります。事業内容・広報計画・チーム運営まで全てを決定し、あとは実行するだけ!の状態まで2日間でまとめ上げます。
ターゲットとして浮かび上がってきたのは、家族婚・少人数・格式高いきちんとした結婚式を由緒ある神社でやりたいと考える層。家族のためにやりたい、と考える人が多いことが見えてきました。そこで、家族婚に絞ってサービスを生み出していくことに。家族婚プランを設定し、PR用パンフレットやホームページを制作することとしました。 また、会館の雰囲気が社務所のようで結婚式をしたいという気分にならないのではという声もあったため、内装のリニューアルも実施することになりました。
「結び」を伝える
縁結びの神社としての歴史と伝統、人と人とのご縁を大切にという想いを、これからの時代に合わせて伝えていく。そのために「結び」をコンセプトとして据えました。
得られた成果
リニューアルしたパンフレットやホームページなどのツール類、会館内装ともに大変好評とのこと。ターゲットに設定した家族婚を求める層が実際に増えている手応えもあるそうで、今後さらに広報活動を展開し、見込み客を増やしていく段階に入っています。白山会館
〒951-8132 新潟県新潟市中央区一番堀通町1-1
https://www.niigatahakusanjinja.or.jp/kaikan/
※記事内容は取材当時のものです